耳鼻咽喉科展望
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臨床
術前血管塞栓療法が有効であった鼻腔血管腫の2症例
吉福 孝介永野 広海黒野 祐一
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2009 年 52 巻 1 号 p. 34-42

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抄録

鼻腔粘膜は非常に血流に富んでおり, 鼻副鼻腔は, 顔面の深部に存在し複雑な構造をなしているので, 部位によっては目的とする腫瘍を十分な視野に置くことが困難である。特に血管性腫瘍の症例では, 大量出血をきたすことがあるので適切な方法を用いる必要がある。今回われわれは栄養血管塞栓後, 内視鏡下に鼻腔血管腫を摘出し得た2症例を経験したので報告する。
症例1は55歳男性, 主訴は右鼻出血であった。左中鼻道から総鼻道を充満する表面平滑, 易出血性の腫瘍を認め, CTにて右鼻腔内に不均一な造影効果を認める軟部組織陰影を認めた。血管造影検査を施行し顎動脈にマイクロカテーテルにて進め, 下行口蓋動脈分岐部付近まで挿入しマイクロコイルにて塞栓した後に, 内視鏡下に腫瘍を一塊に摘出した。症例2は54歳男性, 主訴は左鼻出血であった。左鼻腔内に易出血性の腫瘤が存在し, CTにて左中鼻甲介前方に鼻中隔を圧排する造影効果を認める腫瘤を認めた。血管造影検査を施行し蝶口蓋動脈をマイクロコイルにて塞栓した後, 内視鏡下に, 腫瘍を一塊に摘出した。
今回, 2症例において術前血管塞栓術を施行した結果, 術中出血は少量であり, 術前血管塞栓術は有効と考えられた。

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