耳鼻咽喉科展望
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臨床
鼻腔内に発生した髄外性形質細胞腫の1例
森 智昭江川 峻哉小野 智裕門田 哲弥古矢 彩子嶋根 俊和寺尾 元三邉 武幸
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2009 年 52 巻 6 号 p. 456-460

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抄録

形質細胞腫の多くは, 骨髄内で形質細胞が増殖する多発性骨髄腫の形をとる。形質細胞が髄外性に増殖する髄外性形質細胞腫は比較的少なく, 多くは鼻, 副鼻腔に発生する。今回我々は鼻腔内に発生した髄外性形質細胞腫の1例を経験したので報告する。
症例は58歳の男性, 1988年, 2006年4月と, 11月に他院にて鼻腔腫瘍摘出術を施行され, 病理検査結果は形質細胞腫であった。2007年3月当科を紹介受診, 初診時に両側下鼻道に表面平滑で暗赤色調の腫瘍を認めた。CTでは両下鼻道に約1cm大の造影効果のある腫瘤陰影を認めた。検査所見はIgAが538mg/dlと軽度高値を認める以外に異常所見は認めなかった。また, 血中M蛋白や尿中Bence-Jones蛋白は陰性, 骨髄生検は正常であった。
鼻腔髄外性形質細胞腫の再発を疑い, 2007年5月に腫瘍摘出術を施行した。術後の病理組織所見も形質細胞腫で矛盾しない所見であり, 鼻腔髄外性形質細胞腫の再発と診断した。術後に放射線療法 (45Gy) を施行し, 再発なく経過観察中である。
髄外性形質細胞腫は多発性骨髄腫への移行例の報告もあり, 術後も長期にわたり経過観察が必要と考えられた。

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© 2009 耳鼻咽喉科展望会
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