2011 年 54 巻 6 号 p. 420-425
比較的稀な疾患である甲状腺悪性リンパ腫の症例報告である。症例1は急速な頸部腫脹, 経口摂取困難と嚥下時痛を認めた61歳男性, 症例2は嚥下時違和感により発症した82歳女性である。2症例とも甲状腺腫脹による気管の圧排と気道狭窄を認めたため, 早急な気道管理が必要であった。症例1では気管切開を行い, 症例2ではステロイドホルモンを投与し対応した。甲状腺悪性リンパ腫の予後は比較的良好であるため, 治療開始までの気道確保は非常に重要である。甲状腺悪性リンパ腫に関して, その頻度や症状, 検査, 気道管理と治療・予後について考察する。