2012 年 55 巻 6 号 p. 410-416
過去にわれわれは前庭神経炎急性期患者における脳血流変化について, easy Z-score imaging system (eZIS) を用いた脳血流SPECTで検討して報告した。今回, われわれは罹患後6ヵ月に脳血流SPECTを再施行し得た3症例において, 急性期と回復期の脳血流の経時的変化と眼振所見, 半規管麻痺および自覚症状との関連を検討した。前庭神経炎の罹患側の対側で認めたparieto-insular vestibular cortex (PIVC) の血流増加は自発眼振, 頭位眼振の軽減や消失に伴い正常化への傾向を認めた。一方, 両側性のVisual cortexにおける血流低下は明らかな経時的変化を示さなかったが, 急性期に認めた左側に優位なBrodmann area 40 (BA40) の血流低下は, 罹患後6ヵ月に眼振が消失した症例においてのみ改善傾向を認めた。PIVCの血流増加の正常化や眼振の消失と, BA40の血流低下の正常化傾向には何らかの関連性があるのではないかと考えられた。