耳鼻咽喉科展望
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第35回 日本医用エアロゾル研究会
エアロゾル療法に用いる薬剤の特性と適切な取り扱い
吉山 友二
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2012 年 55 巻 Supplement1 号 p. s40-s43

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抄録

エアロゾル療法は, 病変部位に薬剤が直接到達して効果を発現する理想的な局所療法であり, 耳鼻咽喉科を中心とした各科領域において有用視されている。
有用なエアロゾル療法を適正に展開するために薬剤の特性とその適切な取り扱いを提言したい。
エアロゾル療法は安定性の良い微粒子が比較的均一に得られるという観点から理想的な局所療法と考えられる。しかしながら, ネブライザー噴霧により薬剤の安定性は保持されたまま100%噴霧されているとの未検証の前提に基づきエアロゾル療法が施行されてきた。我々は, ネブライザー使用時に一部の薬剤で安定性に問題があることを指摘してきた。また, エアロゾル療法に用いる薬剤は, たとえ薬理作用に問題がなくとも, 臭気の発生や味覚が悪いとかえって喘息様発作を誘発することがあるといわれ, 薬剤安定性はもとよりにおいや味などについても考慮すべきである。薬液の中には生理的な浸透圧を逸脱し, 刺激を有することも懸念される。噴霧薬剤による周辺汚染も十分な対策が必要であることを指摘したい。
これまでエアロゾル療法専用の市販製品は少なく, 抗生物質などでは一般に注射剤を代用することが問題視され, エアロゾル療法専用薬剤の開発が強く要望されてきた。1996年にエアロゾル療法専用の薬剤の臨床使用が可能となり, エアロゾル療法における新しい局所耳鼻科用剤として繁用されている。
適正エアロゾル療法に向けたガイドラインの活用など学会が貢献するチャンスであると考える。本研究会での有意義な討議が, 今後のエアロゾル療法の道標となるとを強調したい。

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