耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
ラリンゴマイクロサージェリー後に舌下神経麻痺をきたした1症例
井坂 奈央増田 文子満山 知恵子齋藤 ももこ志和 成紀
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 56 巻 2 号 p. 75-78

詳細
抄録

ラリンゴマイクロサージェリー後の舌下神経麻痺を経験したので報告する。症例は56歳女性で嗄声を主訴に当科を受診し, 左声帯ポリープと診断した。全身麻酔下でラリンゴマイクロサージェリーを施行したが, 直達喉頭鏡での喉頭展開は困難であった。術後より疼痛, 咽頭腫脹を認め, 術後1日目には, 喉頭ファイバー下で左舌根部に発赤腫脹と内出血を認め, 若干舌運動の制限がみられた。退院後, 術後性舌下神経麻痺としてビタミンB12 とステロイドで治療し, 経過観察していたが術後53日で症状は改善した。挿管時または直達喉頭鏡挿入時の舌根部への強い圧力が腫脹, 血腫を引き起こし, 局所の循環不全により舌下神経麻痺の原因になったと考えた。
喉頭展開の難しい症例では, 舌下神経の損傷や周囲組織の挫滅による循環不全を起こす可能性もあるため注意しなければならず, 内視鏡等別の手段も考慮すべきである。

著者関連情報
© 2013 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top