2013 年 56 巻 2 号 p. 79-84
外科系で重要となる院内感染は, 手術部位感染および術後呼吸器感染症である。その原因微生物を知ることにより, 感染予防および対策について概説した。手術部位感染の原因は術野の汚染 (術野感染症) であり, 汚染菌は患者自身が消化管内や気道, または皮膚の常在細菌であることがほとんどで, 内因性感染といえる。一方術後呼吸器感染症は術野外感染症 (遠隔感染症) であり, 多くは院内環境の汚染菌や抗菌薬による菌交代現象によって発症する外因性感染といえる。術後感染症は術後感染予防抗菌薬が投与されたあとで発症し, 耐性獲得されている可能性が高いため, 治療抗菌薬への変更が必要になってくる。その治療抗菌薬の選択に, 菌種の推定が可能なグラム染色の結果を参照にすべきであろう。