耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
耳硬化症に対する再手術例の検討
山本 和央宇田川 友克谷口 雄一郎鴻 信義小島 博己
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 56 巻 5 号 p. 238-244

詳細
抄録

 1984年1月から2012年3月までの28年間に当科で施行した耳硬化症に対する全アブミ骨手術252耳のうち再手術症例8名9耳 (3.6%) を対象とし, 再手術までの経過, 再手術の術中所見, 聴力経過不良な原因, 再手術後の経過について検討した。
 前回手術から再手術までの平均期間は5年3ヵ月であった。再手術時の所見から, 聴力経過不良の原因が人工耳小骨の何らかの偏位・脱落によると考えられたものが7耳で, そのうちキヌタ骨長脚の先端が壊死していたものが1耳存在した。増生した線維性組織や肉芽によるものと考えられたものが2耳であった。
 再手術後, 米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 (AAO-HNS) ガイドラインの基準案に準じて術後骨導値による術後気骨導差が 10dB 以内の成功例と判断されたものは9耳中5耳 (55.6%) であった。9耳中1耳で再手術後高度感音難聴を認めた。初回手術に比し再手術の治療成績は劣るものの再手術前の聴力より改善する例も多く, 積極的な再手術を試みるべきであるが, より慎重な手術操作や再手術時のそれぞれの状況に合わせた柔軟な対応が求められると考えられた。

著者関連情報
© 2013 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top