耳鼻咽喉科展望
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第36回 日本医用エアロゾル研究会
上顎洞へのエアロゾル移行特性に関するCFD解析
山本 高久藤井 直子藤澤 利行中田 誠一岩田 昇鈴木 賢二
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2013 年 56 巻 Supplement3 号 p. s196-s201

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抄録

鼻疾患の治療方法の一つであるエアロゾル吸入法において, 様々な要因が薬液エアロゾルの鼻腔内輸送および副鼻腔への移行特性に影響を及ぼしていると考えられている。エアロゾル吸入法の治療条件 (薬液エアロゾルの供給流量および供給圧, エアロゾル粒子径等) のほか, 症例の鼻腔形状, 粘膜の肥厚・炎症の度合い, 自然口径などである。数値流体力学解析を用いた既往の鼻腔内エアロゾル輸送解析では, 上述の要因は深く考慮されず, 正常な鼻腔に着目したものがほとんどであった。そこで本研究では鼻中隔彎曲および副口を有する症例 (左鼻腔) を対象に数値流体解析を実施し, また, 鼻中隔彎曲のない鼻腔のエアロゾル輸送特性との比較検討を行った。その結果, 鼻中隔彎曲がない鼻腔において上顎洞自然口を介した鼻腔から上顎洞への薬液エアロゾルの移行は, 投入された全エアロゾルのおおよそ0.2%未満であること, その一方で, 鼻中隔彎曲, 副口を伴う症例では2%であることが明らかになった。後者は上顎洞自然口近傍に速い流れ場が形成されており, 加えて副口があることにより, 鼻腔―上顎洞の物質交換が促進されたものと考えられる。

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© 2013 耳鼻咽喉科展望会
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