耳鼻咽喉科展望
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臨床
青年・成人期をむかえた脳性麻痺症例の聴力像の検討
力武 正浩加我 君孝
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2014 年 57 巻 3 号 p. 133-137

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抄録

  脳性麻痺は母胎内から生後4週までに仮死や高ビリルビン血症等によって引き起こされる中枢性麻痺の総称である。 麻痺の程度や部位により脳性麻痺のタイプが分類され, 痙直型もアテトーゼ型も難聴をきたす症例が多い。 難聴の原因としては, ABR が導入される以前は中枢性難聴と考えられていた。 しかし現在では低酸素や迷路血液関門の未熟性による高ビリルビンが内耳に到達することにより, また仮死による低酸素により蝸牛が障害され難聴が引き起こされると考えられている。 脳性麻痺症例における青年・成人期の聴力像の報告は少なく, 今回我々は青年・成人期を迎えた脳性麻痺症例を対象として, 標準純音聴力検査を行い, 難聴を認めた症例の聴力像を報告する。 難聴は軽度から高度の感音難聴まで様々であった。 中等度以上の難聴にもかかわらず放置され, 成人期になって初めて補聴器を装用し聞こえがよくなり大変喜ばれた症例も認められた。 脳性麻痺の症例は耳鼻咽喉科を受診せずに難聴の評価がされず放置されている例も多く, 聴覚の評価と補聴は非常に重要である。

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