耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
腎転移をきたした下咽頭癌の1症例
今野 渉金谷 洋明後藤 一貴山川 秀致中島 逸男平林 秀樹春名 眞一
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 57 巻 3 号 p. 146-150

詳細
抄録

  下咽頭扁平上皮癌は, 肺や骨に転移することが知られているが, 腎に転移することはまれである。 今回我々は腎転移を来した下咽頭癌の1例を経験したので報告する。
症例は46歳女性。 下咽頭輪状後部癌 T4aN2cM0 に対して導入化学療法を2コース後に咽頭喉頭食道全摘・両側頸部郭清術・遊離空腸再建を施行した。 病理組織学的検査で, 転移陽性リンパ節が6個であったため術後補助治療として化学放射線療法を施行した。 術後約6ヵ月後に右腰部痛が出現したために PET を施行したところ集積が認められた。 針生検で下咽頭癌からの転移と診断した。 Performance status が不良のために腎摘の適応はないものと判断し, 他院で陽子線治療を施行した。 治療後, PET での異常集積が一時消失したが再発を来たし永眠した。
  下咽頭癌からの腎転移はまれではあるが, 初期には血尿や腎機能障害が出現することが少ないので, 下咽頭癌の初診時ならび治療後の転移巣検索を行う場合は, 腎への転移する可能性も考慮して検査を選択する必要があると考えられた。

著者関連情報
© 2014 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top