2016 年 59 巻 4 号 p. 170-176
1990年代後半から続く, 小児急性中耳炎難治化には, 原因菌の薬剤耐性化が大きく関わっていた。 その薬剤耐性化はセフェム系抗菌薬の濫用が大きく関与したことが明らかとされており, 耐性菌対策としてペニシリン系抗菌薬を第一選択とする治療戦略が有効である。 この戦略をより具体的にまとめたのが,「小児急性中耳炎診療ガイドライン」である。 本邦では, 2009年から2013年にかけて, 新規抗菌薬と肺炎球菌ワクチンの環境が相次いで整い, その効果として急性中耳炎の軽症化が明らかとなりつつある。 しかし, 抗菌薬の更なる開発が期待できない状況, 耐性化率の高い非ワクチン株の増加が報告される現状を踏まえ, 抗菌薬の適正使用の重要性を再確認する必要がある。