耳鼻咽喉科展望
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臨床
スニチニブ治療後に手術を施行した腎細胞癌頸部転移例
中村 由紀浅岡 恭介伊地知 圭村上 信五
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2016 年 59 巻 5 号 p. 243-248

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抄録

 腎細胞癌は異時性多発性転移を来たしやすく, 頭頸部領域への孤立性転移はまれである。
 今回われわれは腎細胞癌で腎臓摘出を受け, 約25年経過し頸部転移した症例を経験した。 症例は70歳男性。 右側頸部腫瘤を自覚し当院当科を受診した。 針生検にて腎細胞癌淡明細胞癌の頸部転移と診断し, また画像検査にて S 状結腸癌の合併が判明した。 まずは S 状結腸癌による S 状結腸に強い狭窄と易出血性であるため, 当院外科にて S 状結腸, 回盲部切除が行われた。 その後, 当科での甲状腺全摘, 下咽頭・喉頭全摘出術, 頸部郭清術を検討したが患者は手術を希望しなかったため, 泌尿器科にてスニチニブの投与が開始された。 約17ヵ月内服し甲状腺腫瘍は著明に縮小したため, 甲状腺全摘, 右頸部郭清術 (D2b) を施行した。 術中の出血量は約 500cc であった。 術後は合併症なく経過良好で退院となった。 その後は外来で経過観察しているが, 頸部には再発を認めていない。

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