2016 年 59 巻 6 号 p. 298-305
癌治療にともなう化学放射線療法において, 発熱性好中球減少症は重篤な合併症であり, 予防と早期対応が重要である。
今回, われわれは頭頸部癌の化学療法中に発熱性好中球減少症 (febrile neutropenia: FN) を認めた2症例に対して, 2014年9月より本邦で承認された持続型 G-CSF 製剤ペグフィルグラスチム (ジーラスタ®) が重篤な感染症の回避に有効であった症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
症例1は62歳男性。 上咽頭原発神経内分泌癌に対して化学放射線療法 (CBDCA+ETP) を施行した。 化学療法1コース目の day 8 に38.9℃ の発熱, 好中球減少 G4 (80/mm3)を認め, 発熱性好中球減少症と診断した。
症例2は72歳男性。 声門上扁平上皮癌に対して導入化学療法 (TPF 療法) を施行した。 化学療法1コース目の day 7 に好中球減少 G4 (144/mm3), day 8 に38.3℃ の発熱を認め発熱性好中球減少症と診断した。 それぞれの症例に対して2コース目よりペグフィルグラスチムを二次予防的投与したところ発熱性好中球減少症の発症を予防することができ, 安全に治療を完遂することができた。
ペグフィルグラスチムの頭頸部癌症例における使用報告はほとんどなされていない。 他癌も含め国内でのペグフィルグラスチムの使用経験はまだ少なく, 長期使用した場合の副作用などの問題点は明らかになっていない。 今後も症例を重ね更なる使用方法の検討を行っていく必要がある。