耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
声門下に転移した前立腺癌の1例
後藤 一貴金谷 洋明常見 泰弘今野 渉柏木 隆志近藤 農井上 大介平林 秀樹春名 眞一
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 60 巻 3 号 p. 123-128

詳細
抄録

 喉頭悪性腫瘍の大部分は原発性であり, 転移性のものは稀である。 過去の報告でその頻度は0.09~0.4%と推定されている。 転移性喉頭腫瘍の原発となる臓器は皮膚, 消化管, 腎臓など多岐にわたるが, 今回われわれは前立腺腺癌の声門下転移症例を経験した。

 【症例】 70歳, 男性。【主訴】 嗄声。

 【現病歴】 平成 X 年1月頃より嗄声が出現したため近医耳鼻咽喉科を受診し, 声門下腫瘍を指摘され当科紹介となった。 喉頭内視鏡検査にて声門下に暗赤色の表面平滑で境界明瞭な腫瘤を認めた。 頸部造影 CT では, 声門下前方に造影効果のある腫瘍を認めた。 リンパ節転移は認めなかった。

 【経過】 直達喉頭鏡にて病変を切除し, 腺癌の診断を得た。 前立腺癌の多発性皮膚転移, 骨転移があり, 前立腺腺癌の喉頭転移と診断した。 腫瘍切除により気道は確保され, 本人, 家族, 他院泌尿器科主治医と相談し, 喉頭への追加治療は行わなかった。 他臓器からの遠隔転移を想定した問診が重要と考えた。

著者関連情報
© 2017 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top