耳鼻咽喉科展望
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臨床
当院における歯性上顎洞炎の臨床的検討
武田 桃子森 恵莉飯村 慈朗浅香 大也波多野 篤鴻 信義
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2018 年 61 巻 4 号 p. 202-208

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抄録

 歯性上顎洞炎に対する, 歯科治療や内視鏡下鼻副鼻腔手術 (Endoscopic Sinus Surgery: ESS) の適応や歯科治療介入時期に関し, 一定の見解は得られていない。 東京慈恵会医科大学附属第三病院において, 平成24年10月から平成26年5月までの20ヵ月間に, 副鼻腔 CT で歯性上顎洞炎と診断した107例を対象に, ESS・歯科治療・14員環系マクロライド薬少量持続投与 (マクロライド療法: ML 療法) 介入の有無等の治療方法, 治療経過を後ろ向きに調査した。 治療内訳としては, ML 療法のみ32例 (29.9%), ESS+ML 療法27例 (25.2%), 歯科治療+ML 療法20例 (18.7%), ESS+歯科治療25例 (23.4%) であった。 ESS + 歯科治療群では有意に改善を認め (76.0%, p=0.017), ML 療法のみでは有意に改善に乏しかった (28.1%, p=0.000)。 ESS + ML 療法では55.6%, 歯科治療+ML 加療では65.0%の改善率であった。 ML 療法のみでは患側凸の鼻中隔弯曲 (p=0.021), 患側 OM C閉塞 (p=0.012), 上顎洞~篩骨洞陰影 (p=0.022), 上顎洞~前頭洞陰影 (p=0.026) を有する場合には有意に改善に乏しかった。

 歯性上顎洞炎は早期に歯科治療介入を促すことで, ML 療法をはじめとした内服加療で症状の改善が期待できる。 しかし, 副鼻腔陰影分布や鼻内所見次第では歯科・耳鼻咽喉科での双方の保存的加療に加え, ESS が必要となる可能性が示唆された。

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