耳鼻咽喉科展望
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臨床
巨舌によるオトガイ部腫脹から診断に至った全身性アミロイドーシスの1例
高津 南美子内尾 紀彦黒田 健斗重田 泰史
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2018 年 61 巻 5 号 p. 262-267

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抄録

 今回われわれは, 巨舌によるオトガイ部腫脹から診断に至った全身性アミロイドーシスの1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。 症例は67歳女性, 3ヵ月前から出現したオトガイ部腫脹の精査目的に富士市立中央病院耳鼻咽喉科を内科より紹介受診した。 内科では同時期より心不全と胃壁肥厚の精査をしていた。 身体所見にて硬い巨舌を認め, MRI 検査ではオトガイ部腫脹は巨舌によるものであるとの診断であった。 血液検査で IgA の高値, IgM と IgG の低値を認め, 生理機能検査で心電図の低電位, 心エコーで心肥大を認めており, さらに両側手根管症候群の手術既往や巨舌の存在からアミロイドーシスを疑うこととなった。 そこで胃壁生検組織のアミロイド染色を追加し, 免疫電気泳動を行ったところ全身性 AL アミロイドーシスの診断に至った。 全身性アミロイドーシスは, 全身臓器にアミロイド蛋白が沈着することによりさまざまな臓器障害を引き起こす稀な疾患である。 ときに頭頸部領域の症状を主訴に耳鼻咽喉科を受診することもあるため, 全身状態にも着目しアミロイドーシスを鑑別に挙げる必要がある。

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