耳鼻咽喉科展望
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臨床
発達障害を有し, 真珠腫性中耳炎から小脳膿瘍をきたした1例
高畑 喜臣山口 宗太中野 光花坂口 雄介井上 なつき久保田 俊輝石井 祥子穐山 直太郎吉川 衛
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2018 年 61 巻 6 号 p. 318-323

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抄録

 耳性頭蓋内合併症は現在減少傾向にあるが, 発症した場合は生命予後に関わるため, 見逃してはならない疾患である。 しかしながら, 小児や高齢者, 発達障害がある患者等では訴えがはっきりせず発見が遅れる場合があり, 特に注意を要する。 今回, われわれは発達障害のある患者が真珠腫性中耳炎から小脳膿瘍をきたした1例を経験したので報告する。

 症例は発達障害を有する21歳の男性で, 2週以上続く発熱, 食欲不振に加え意識障害, 歩行障害が出現したため当院内科に入院となった。 不明熱に対して病巣の全身検索を行ったところ, 頭部 CT 検査で右小脳に膿瘍形成を認め, 当院脳神経外科で脳膿瘍排膿術, 減圧開頭術を施行したのち, 原因病巣の検索目的に当科を紹介受診となった。 右耳内に膿性耳漏が充満していた。 側頭骨 CT 検査では右鼓室, 乳突腔に充満する軟部組織陰影と S 状静脈洞周囲の骨欠損を認めた。 右真珠腫性中耳炎から波及した小脳膿瘍が疑われ, 入院10日目に右外耳道後壁削除・乳突開放型鼓室形成術を施行した。 術中所見として真珠腫塊は上鼓室, 乳突洞から乳突蜂巣まで及び, 周囲に肉芽を伴っていた。 天蓋では一部硬膜が露出し, S 状静脈洞の周囲に骨欠損を認めた。 また, 耳小骨はキヌタ骨長脚およびアブミ骨上部構造の一部が欠損していた。 病巣を十分に取り除いた後に骨パテで硬膜および S 状静脈洞周囲の骨欠損部を被覆し, 伝音再建は自家皮質骨を用いて IVc とした。 術後は抗菌薬投与を長期行い, 術後9ヵ月後には全身状態は寛解した。

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