耳鼻咽喉科展望
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臨床
下顎骨浸潤を伴う顎下腺原発扁平上皮癌の1例
西嶌 嘉容伴 慎一穴澤 卯太郎栃木 康佑海邊 昭子蓮 琢也田中 康広
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2019 年 62 巻 4 号 p. 169-174

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抄録

 唾液腺癌は頭頸部癌全体の約1%程度とされ, なかでも顎下腺原発の扁平上皮癌は特に稀とされる。 今回下顎骨への浸潤を伴う顎下腺原発扁平上皮癌の1例を経験した。 症例は71歳男性で約半年前より左顎下部の無痛性腫脹を認め, 精査目的で紹介となった。 左顎下部に下顎骨との癒着が疑われる可動性不良な硬結を認め, CT・MRI 上, 下顎骨浸潤が疑われた。 術前の穿刺吸引細胞診では class V であり組織型として扁平上皮癌が示唆されたため, 原発もしくは転移性リンパ節の同定の検査を行い顎下腺原発扁平上皮癌と診断し手術を施行した。 顎下腺全摘, 下顎区域切除, 左頸部郭清, 気管切開, 遊離前腕, 遊離腓骨皮弁再建, 全層植皮を実施した。 術後の病理所見では顎下腺を原発とする典型的な扁平上皮癌の像が認められた。

 顎下腺原発扁平上皮癌の報告はごくわずかであり, 骨浸潤を伴う顎下腺原発扁平上皮癌は渉猟し得る限りほとんど報告がない。 顎下腺腫瘍で扁平上皮癌と診断された場合は転移性リンパ節や浸潤性腫瘍とともに顎下腺原発扁平上皮癌も鑑別に考慮すべきである。

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