耳鼻咽喉科展望
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臨床
高齢者の慢性めまいに対する前庭リハビリテーションの効果
鈴木 香宮本 康裕笹野 恭之荒井 光太郎西本 寛志四戸 達也大原 章裕稲垣 太朗望月 文博三上 公志谷口 雄一郎肥塚 泉
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2020 年 63 巻 2 号 p. 59-65

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抄録

 我が国は世界でも有数の超高齢社会である。 本研究では, めまいや平衡障害を有する65歳以上の患者を対象として, 前庭リハビリテーションの効果について検討を加えた。

 対象は65歳以上のめまい患者21名で, 男性7名, 女性14名で, 前向きの介入研究とした。 前庭リハビリテーションの効果については, Dizziness Handicap Inventory を用いて, 前庭リハビリテーション介入前と介入2ヵ月後を比較検討した。 なお前庭リハビリテーションには Tusa らが提唱した X1 パラダイムと Brandt-Daroff 法を被験者に行ってもらった。

 結果, 前庭リハビリテーション介入前に比べて介入後は, Dizziness Handicap Inventory の平均値と三つのカテゴリー (動作・情緒・機能) とも有意に改善した。 前庭リハビリテーションの手法である, X1 パラダイムは半規管動眼反射の左右差を是正することを主な目的とし, Brandt-Daroff 法は半規管動眼反射の左右差を是正することを目的としている。 つまり一側性の前庭機能低下症例のみならず前庭機能の左右差が少ないとされる加齢性平衡障害の症例においては, 前庭リハビリテーションによって前庭代償が促進された結果, 自覚症状が改善したと考えられる。 めまい患者に対して前庭リハビリテーションを適用するにあたっては, 半規管動眼反射の左右差を是正することを目的とした前庭代償を促すことが重要である。

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