耳鼻咽喉科展望
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臨床
当院で経験した副甲状腺癌の1例
斎藤 翔太鄭 雅誠加藤 孝邦小島 博己
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2020 年 63 巻 5 号 p. 235-241

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抄録

 副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症 (primary hyperparathyroidism: pHPT) の中で, 5%以下と稀な疾患である。 今回, 副甲状腺癌の1例を経験したので報告する。

 症例は62歳, 男性。 腎機能障害, 両側腎結石の精査目的に, 当院腎臓内科を紹介受診した。 高カルシウム血症を認め, 当院内分泌内科で精査し, 左副甲状腺腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症の診断となった。 血清カルシウム値が異常高値のため内服治療を行うも, 血清カルシウム値の正常化は得られず, 当科に摘出手術依頼となり, 当科で左副甲状腺腺腫摘出術を施行した。 術後病理組織所見から副甲状腺の adenocarcinoma との診断に至り, その病理組織所見上で被膜浸潤を認めることから, 微小転移の存在が危惧されること, また初回手術は腫瘍切除のみであったため, 根治手術になっていない可能性が否定できず, 追加手術として甲状腺左葉切除, 左気管傍リンパ節郭清術を行った。 術後1年経過したが, 局所再発, 遠隔転移は認めていない。

 副甲状腺癌では被膜を損傷すると播種をきたす危険があるため, 穿刺吸引細胞診や針生検は原則禁忌である。 pHPT の患者において術前の臨床所見から, いかに副甲状腺癌を見落とさないかを念頭におき, 治療介入する必要がある。

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