耳鼻咽喉科展望
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粒子線治療
茂木 厚
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2021 年 64 巻 4 号 p. 240-246

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抄録

 頭頸部癌は粒子線治療の良い適応であり, 近年そのエビデンスの構築が進んでいる。 粒子線治療のうち, 陽子線や重粒子線 (炭素線) 治療装置は, 日本国内でも設置施設が増加している。 ともに, 物理的にブラッグピークと呼ばれる特徴的なエネルギー分布を示し, 一定の深度以上で物質への影響がピーク状に急激に増加したのち, 急激に減少する。 その特性により, 粒子線治療は, 標的に対する線量集中性を高めつつ, 周囲の正常組織への影響を軽減することが可能となっている。 実臨床では, 陽子線の生物学的効果は X 線とほぼ同等であるため, X 線治療で同時併用される化学療法を併用しやすいとされる一方, 重粒子線は生物学的効果が X 線, 陽子線と比べて高く, 放射線抵抗性の腫瘍に対する効果が期待されている。 本稿では, 頭頸部癌領域における粒子線治療の基礎ならびに臨床応用に関して述べ, さらに最近保険収載されたホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) も最新の粒子線治療の一つとして紹介する。

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