耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
末梢前庭障害性のめまい症における補充現象検出について
特にメニエール病を中心として
長谷部 良子
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 18 巻 Supplement4 号 p. 347-386,341

詳細
抄録

メニエール病の診断基準の一つとして必要な内耳性難聴の存在は, 補充現象の有無が, その存在を裏付けるものとして重要であるが, 補充現象の検査法であるFowlerのBalance Testは, 実施上困難な症例もあり, また判定も必ずしも容易でない。このことは, 臨床上メニエール病の確定診断の上で隘路となつている。本研究の目的は, FowlerのBalance Testに代り得る検査法あるいは, 補助診断法について検討することを目的としたもので, すでに間接的に補充現象の検査として知られているBekesy Audiometrieにおける振幅縮少, SISI Test (short increment sensitivity index Test), MCL (most comfortable loudness level), UCL (uncomfortable loudness levl) の諸検査法について評価ならびに基準としての検査法にくみ入れる妥当性を検討することにある。
研究対象は, めまいを主訴として来院した患者のうち, 各種の閾値上聴力検査を行いえた85症例および対照として正常者20名, めまいの伴わない両側内耳性難聴者7名の合計112症例である。
また, 神経耳科学的検査は, 末梢迷路性障害か, 後迷路障害かの鑑別に重点をおいて実施した。
以上の諸検査の結果を検討した結果, 各閾値上聴力検査のうち, 補充現象の検出率の最も高いものは, SISITestであつた。MCL, UCLの検査成績は, SISI Testに次ぐ検出率を示したが, 補充現象の陽性陰性の境界が不明瞭で判定上信頼性に劣るが, 補助的診断としては価値を認める。またBekesy Audiometrieによる振幅縮少は, 上述の2つの検査に比べて信頼性は高いが, 検出率の点で劣つていた。
メニエール病を対象とした場合は, 他の診断基準を充たしている場合, SISI Test, BekesyAudiometrieのいずれかが陽性であれば, 単独でBalanceTestに代用しうる。しかし補充現象を確実に診断するためには, 少くとも2種類以上の検査で判定を下すのが望ましい。
なお, 補充現象の精度としては, Balance Test, Bekesy Audiometrieによる振幅縮少, 次いでSISITestという順序になる。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
次の記事
feedback
Top