耳鼻咽喉科展望
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小児滲出性中耳炎に対する抗アレルギー剤の検討
塩酸アゼラスチンの有効性について
森本 賢治成田 慎一郎鈴木 敏夫形浦 昭克砂金 秀充上村 正晃東 英二木村 徹男萩原 秀夫
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1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 399-407

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抄録

小児滲出性中耳炎に対する抗アレルギー剤塩酸アゼラスチンの臨床的有効性, 安全性について検討した。小児滲出性中耳炎患児66例に対し, 塩酸アゼラスチン2mgを8週投与し, 自覚症状 (耳鳴, 難聴, 耳閉感), 他覚所見 (内陥, 発赤, 貯溜液, 可動性, ティンパノグラム, 気導聴力) から, 改善率を5段階に評価し検討したところ,「中等度改善」以上は48.5%,「軽度改善」以上は68.2%であった。アレルギー性疾患, アデノイド, 慢性副鼻腔炎の合併の有無による改善率の比較を行ったが, これらの合併症があることにより, 改善率の低下を見た。
これらの結果から, 塩酸アゼラスチンの滲出性中耳炎に対する働きは, 単に1型アレルギーに作用するだけではなく, むしろそれ以外の作用, たとえばIII型アレルギーへ関与の可能性が推察された。以上より小児滲出性中耳炎の保存的治療のひとつとして, 塩酸アゼラスチンは充分に期待しうる薬剤であることが認められた。

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