耳鼻咽喉科展望
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Silent Otitis Media と Meningitis
側頭骨病理組織所見から
春名 真一Patricia A. Shachern春名 裕惠Dragoslava R. DjericMichael M. Paparella
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1993 年 36 巻 4 号 p. 437-445

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抄録

silent otitis media (SIOM) と髄膜炎との関連について検討するために, 2歳以下の髄膜炎で死亡した7例14側の側頭骨病理標本と, 髄膜炎以外で死亡し組織学的に中耳炎所見を呈した3標本とを対比した。前者の鼓膜はすべて石灰化, 穿孔, 菲薄等のない肉眼的に正常な状態であったが, 中耳腔は主に化膿性の滲出液が貯留し, 高度に残存した間葉組織と多数の炎症細胞の浸潤した肉芽組織が存在した。また, それらの全症例には, 強い炎症所見が正円窓膜の両側に, そのうち8耳にはその中間層にも認められ, さらに, 1耳の卵円窓に炎症細胞が浸潤していた。そして, ほとんどの症例で外リンパ腔を中心とした内耳から蝸牛水管, 蝸牛軸, 内耳道に炎症所見が観察された。一方, 後者の中耳腔は髄膜炎症例と同じく炎症状態を呈したが, 正円窓膜や内耳には所見が之しかった。以上から, 前者の症例には, 髄膜炎発症以前にSIOMが存在したことが示唆され, その状況下で正円窓および卵円窓の膜透過性が変化し, 炎症がtympanogenicに頭蓋内へ波及したと想定された。

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