耳鼻咽喉科展望
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義歯異物摘出後の食道壁修復に対する胸鎖乳突筋弁の使用経験
外切開例における検討
松井 真人加藤 孝邦八代 利伸梅澤 祐二
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1993 年 36 巻 4 号 p. 453-460

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抄録

食道義歯異物で頸部外切開を余儀なくされた症例において, 異物摘出後脆弱化し縫合不能となった食道壁の欠損部に対し, 胸鎖乳突筋弁を利用して修復し得た症例を経験した。
我々が筋弁として胸鎖乳突筋を選んだのは, 次の三つの理由からである。第一に筋弁の血行がよいこと, 第二にある程度の大きさが取れること, 第三に欠損部から近い場所にあることである。
外切開術を必要とした過去の報告例を検討すると年齢分布において二つのピークが存在した。一つは0~10歳の幼少児でありピン・針等の異物が多く, もう一つは50-70歳の中高年層で義歯異物が多かった。外切開手術自体による重篤な合併症は, 検索し得た範囲では見当らなかった。
以上より, 外切開による食道異物摘出は, 異物が義歯や針のように尖鋭である場合や, 大きさや形状から内視鏡的除去が不可能な場合, また長時間介在して咽喉頭の浮腫か局所の損傷が著しい場合など, 適応と判断した時にはむしろ積極的に行うべきであると考えられる。さらに食道壁の欠損部が大きい場合は胸鎖乳突筋弁の利用も有効であると思われる。

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