耳鼻咽喉科展望
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上顎洞炎が原因と思われた鼻側下1/4盲の1例
渋谷 和郎木村 恭之長山 郁生古川 仭
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1993 年 36 巻 6 号 p. 717-722

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抄録

副鼻腔と眼窩, 視神経は解剖学的に隣接するため, 嚢胞性疾患や腫瘍のみならず, 副鼻腔炎も視野障害などの眼症状を引き起こす原因となり得る。今回我々は副鼻腔炎, 特に上顎洞炎の炎症波及によると思われる鼻側下1/4盲を経験したので報告した。症例は55歳の男性。他科で左鼻側下1/4盲を指摘され当科に紹介された。MRI, CTにて左前部篩骨洞, 上顎洞の高度陰影を見た。また上顎洞は発育が非常に良好で, その上端は視神経近くにまで迫っていた。左鼻内内視鏡手術, 左上顎洞根本手術を施行し術後47日目にはほぼ視野の改善をみた。鼻側下1/4盲の場合, 障害部位として視神経の上外方からの圧迫または上外方への炎症波及が考えられるが, 画像上圧迫所見の乏しいこと, 後部副鼻腔はほぼ正常であったこと, 上顎洞の発育が良好であることから, 上顎洞炎の炎症波及が本症を引き起こした可能性が考えられた。

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