抄録
治療に抵抗性な耳漏, 疼痛, 顔面神経麻痺を伴う悪性外耳炎を経験した。MRIで観察されるように, 病巣は我々が考えていた以上に深部にまで波及しており, 手術療法を施行した後も炎症は遷延した。脳神経麻痺を伴う悪性外耳炎の手術適応は諸家の報告に述べられているところであるが, 手術に臨む時点では炎症の進展は広範囲に及んでいると推測される。この疾患で特徴とされる三つの点, すなわち高齢者で, 糖尿病を有し, 起炎菌として緑膿菌が検出された場合には, 直ちに強力な治療を行い, 骨, 軟部組織を含めた広範囲な壊死性変化の進展を防ぐことが重要であると考えられる。