1994 年 37 巻 3 号 p. 288-299
聴力正常例17耳および感音難聴症例23耳を対象に, EOAEおよび蝸電図CMを記録した。正常耳では, 刺激後20msのEOAEの記録上, 反応は潜時が約9msの速い成分 (fast comp.) と, 約13msの遅い成分 (slow comp.) の二つの成分に分けることができた。蝸電図CMにおいてもCMと, 弱音刺激で認められる遅延性反応 (delayed CM) が記録できた。slow comp.とdelayed CMはそれぞれfast comp.およびCMより検出閾値が低く, 入出力曲線の傾きも緩やかであった。感音難聴耳では, 聴力の悪化に伴って検出閾値の上昇が認められたが, その傾向はslow cornp.およびdelayed CMに顕著であった。臨床において, EOAE及び蝸電図CMの遅い反応は関係を有し, かつ有毛細胞の機能の状態のより詳細な把握と, 蝸牛病態の客観的評価に役立ち得るものと考えた。