1994 年 37 巻 3 号 p. 300-310
人工内耳によりコミニケーション手段を再獲得した聾患者の心理的な変化を手術前後で比較検討した。対象は1986~1992年の問に手術を行った患者のうち, 日常的に人工内耳を使用している患者25人で, 心理検査はY-G, CMIおよび風景構成法 (LMT) を用いた。
結果: 1.Y-Gテストにおける12の性格特性では抑鬱性のみが術後に有意に高くなり, 人工内耳の影響は主に情緒面の変化となって現われた。2.LMTでは音を回復した喜びや, 人工内耳を通したコミニケーション能力による外界認知の変化が, 作風の変化となって現われたと考えられる。