1994 年 37 巻 4 号 p. 411-418
内耳障害におけるめまいおよび各種の自律神経症状が時間の経過に伴って代償により消失していくことは臨床的によく経験されることである。このめまい代償を動物実験において検討するためには, 変化する症状を正確に把握することが必要となる。
我々は, ラットへの催吐剤投与や動揺病誘発の際に観察される異味症を利用し, 手術的に片側迷路を破壊したラットのめまい症状の変化を, 異味症を指標として観察した。その結果, 迷路破壊後4日間にわたって異味症が観察された。またこの異味症はアトロピンの投与により抑制傾向が認められ, 副交感神経系の関与が示唆された。
異味症を指標とした片側迷路破壊ラットは, 末梢前庭障害の代償過程における自律神経症状の変化を正確かつ定量的に観察することが可能であり, このことから本実験モデルは薬理学的な検討にも優れ, 末梢前庭障害代償過程の実験モデルとして有用と考えられる。