耳鼻咽喉科展望
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頭頸部外科におけるフィブリン接着剤 (ボルヒール) の使用経験
窪田 哲昭松井 和夫田中 裕之大谷 尚志
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1994 年 37 巻 4 号 p. 485-490

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抄録

頭頸部腫瘍を中心とした36例の手術に対してフィブリン接着剤 (ボルヒール) を止血, 充填, 接着, 固定などの目的に使用した。満足すべき結果を有効, 期待通りの結果が得られない場合を無効と評価した。
止血には他の目的を含め29例に, ジワジワ湧出する出血に適用し, 術後に出血や血腫はみられず全例とも有効と判定した。充填剤としては, 口腔内の癌2例と頬部良性腫瘍1例の計3例である。前者は口腔底部に下顎骨による死腔に充填し, 後者は腫瘍摘出部の口腔内粘膜を縫合したが, 一部欠損したため, 開放性術創の感染防止と創傷治癒を考え本剤を充填した。接着, 固定には, 舌部切3例, 頸部廓清術後のリンパ漏1例, 喉頭全摘後の咽頭縫合部4例, 人工コラーゲン板を用いた再建例5例に使用した。咽頭摘出後の下咽頭縫合部に用いた1例に瘻孔が発生し, この1例のみが予想に反した不満足な結果であったが, 他は満足すべき結果であった。
頭頸部外科の領域においてもフィブリン接着剤の有用性が確認された。今後必要に応じて症例を選択して使用すべきものであろう。

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