上咽頭Rosenmüller陥凹に細菌塊を形成し, 上咽頭癌と紛らわしい臨床像を示した症例を報告した。
患者の主訴は喉のつかえ感であった。ファイバースコープ下に咽喉頭を観察したところ, 両側Rosenmüller陥凹に黄白色壊死様物質の付着を認め, また解剖学的にその周辺がやや隆起しているように見え, 上咽頭癌に極めて類似した像を呈していた。壊死様物質を吸引除去すると, 左Rosenmüller陥凹の中には小豆大ほどの白色の脆い細菌塊が形成されていた。この細菌塊も含めRosenmüller陥凹を清掃することにより, 症状の軽減を見た。
加齢に伴うリンパ組織の萎縮と粘膜の自浄作用の低下がこのような病態を形成したと考えられた。