耳鼻咽喉科展望
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興味ある経過をたどった特発性髄液耳漏の2症例
矢部 武菊池 康隆富谷 義徳太田 正治本多 芳男望月 元博
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1994 年 37 巻 6 号 p. 685-690

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抄録

内耳奇形を伴わない特発性髄液耳漏の2症例を報告する。
第1例は33歳, 女性。右慢性単純穿孔性中耳炎の鼓膜穿孔閉鎖, 聴力改善を目的に受診した。鼓室は湿潤状態である以外には特記すべき所見なく, 鼓室形成術を施行した。手術時, 鼓室内に入ると下鼓室に透明な液体が貯留してくるのが観察され, 乳突洞深部後方より髄液の漏出を認めた。
第2例は34歳, 女性。鼻をかんだ後, バリバリという音がして, 約3時間後に大量の血性耳漏が出現した。耳後切開で外耳道皮膚を剥離していくと出血, 耳漏が多く, 外耳道を削除して乳突削開を施行したところ, 乳突洞後壁より膿が拍動性に出てきたが, 特に処置を施さないうちに髄液の漏出が停止した。可及的に粘膜を除去し, 術創を開放したまま手術を終了し, 髄液の漏出がない事を確認し約1ヵ月後にランボーの充填術を施行した。

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