1995 年 38 巻 4 号 p. 413-419
真珠腫骨破壊をめぐってサイトカインがいかなるネットワークを形成しているのかを明らかにする自的で, 手術時摘出した真珠腫組織を種々の条件下で培養し, 培養上清中の骨吸収活性・サイトカイン濃度を測定した。
その結果, 以下のことが判明した。1) 真珠腫組織培養上清中の骨吸収活性の本体はIL-1αであった。2) TNFαとIL-1αは, 相互に産生を促進し悪循環を形成していた。3) IL-1αに誘導されるIL-6は, TNFα産生抑制を介して間接的にIL-1 産生にネガティブフィードバックをかけていた。4) GM-CSF, TGFαはいずれもIL-1α産生促進的に作用していた。
以上より, 真珠腫性中耳炎においては, IL-1αとTNFαの相互産生促進による悪循環を中心に複雑なサイトカインネットワークが形成されており, ひとたびその引き金が引かれるとIL-1α産生促進の方向へと進み, 産生されたIL-1αが骨破壊に関与することが強く示唆された。