1996 年 39 巻 4 号 p. 362-377
現在さまざまな環境汚染因子が我々の健康や生活を脅かしているが, 近年増加の一途をたどっているアレルギー性疾患とこの環境汚染因子とのかかわりがクローズアップされてきている。今回, アレルギー性鼻炎発症で重要な働きをしている肥満細胞に対する汚染因子-ホルムアルデヒド, 及び紫外線-の影響についてマウスを用いたモデル実験を行った。BMMC (bone marrow derived mast cell) はマウス骨髄細胞を培養することによって得られる粘膜型類似肥満細胞であるが, ホルムアルデヒドと共に培養することでヒスタミン含有量・遊離率や細胞表面IgEレセプター数の増加したBMMCが誘導された。このことからホルムアルデヒド暴露によりアレルギー反応の誘発促進・増強を起こすことが推察された。また紫外線(UVB)を照射された後培養, 誘導されたBMMCはその出現率及びヒスタミン遊離率が低下していた。しかしヒスタミン含有量や細胞表面IgEレセプター数は増加した。紫外線(UVB)は免疫機能を抑制するが, 肥満細胞に対しても抑制的に働きアレルギー反応を抑え込む手段となり得る可能性がある。