1997 年 40 巻 1 号 p. 78-82
耳下腺部に発生したCastleman's diseaseの1症例を報告した。本疾患が耳下腺部に発生する例は非常に稀であり, 本邦では自験例を含めわずか7例であった。病理組織学的には, Hyaline-vasculartypeとPlasma cell typeとに分類され, 共に外科的な根治切除が施行されれば予後は良好とされている。自験例は上記分類のうちHyaline-vascular typeであり, 手術時完全な摘出が施行され, 現時点での再発は認められていない。
本疾患の術前の鑑別診断は困難であり, そのほとんどが術後の病理組織学的診断に依っている。診断的意義を含めた耳下腺部腫瘍の摘出術を施行する際には, 良性・悪性腫瘍を鑑別した上で, 本疾患の存在も念頭におく必要があると思われた。