耳鼻咽喉科展望
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癌転移の診断および治療の可能性
山中 昇與田 順一
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1997 年 40 巻 4 号 p. 386-394

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抄録
癌細胞の転移能は癌の悪性度を規定している最も重要な因子であるが, 癌の転移において癌細胞間の接着が弱まることが転移の第一歩となる。本稿では原発巣からの癌細胞の離脱から, 脈管系への侵入までの過程の中で重要と考えられる因子について記載し, 癌の転移のメカニズムと転移に対する治療の可能性について概略した。接着分子に関しては, 癌細胞間の接着に関与するE-カドヘリン・カテニン複合体の異常により細胞間の結合が弱くなり, 癌細胞同士が離れやすくなることが重要であると考えられる。浸潤については, 癌細胞が周囲の細胞外マトリックスを破壊するために必要な分解酵素 (マトリックスメタロプロテイナーゼ, マトリックスセリンプロテイナーゼ) の産生と阻害物質との不均衡が浸潤性を規定していると考えられる。転移先で腫瘍が増殖するためには血管新生が必要になるが, 血管内皮増殖因子 (VEGF) が腫瘍から産生される主な血管新生因子であると考えられた。転移能の検索には, 癌組織の血管密度を測定することで転移を予測できる可能性が示唆された。転移の治療に関しては, 現時点では血管新生阻害剤が最も臨床応用に近い薬剤であると考えられた。
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