1997 年 40 巻 5 号 p. 546-550
上顎洞に発生した線維炎症性偽腫瘍の1例について報告した。線維炎症性偽腫瘍が上顎洞に発生することは極めて稀であり, 自験例を含めても10例の報告を数えるに過ぎない。
症例は68歳の女性で右の鼻閉を主訴に近医耳鼻科を受診し, CT, MRIにて右上顎洞を中心に骨破壊を伴った腫瘍陰影を認められ当科へ紹介された。鼻内からの組織検査ではfibrovascular polypで悪性所見は認められなかった。しかし, CT上は骨破壊を伴った腫瘍であったため悪性腫瘍を完全に否定することができなかった。上顎部分切除術を施行し腫瘍を完全に摘出した。病理組織診断は線維炎症性偽腫瘍であり悪性所見は認められなかった。術後約3年を経過しているが, 再発は認めていない。