耳鼻咽喉科展望
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聴器悪性腫瘍20例の臨床的検討
田渕 経司原 晃伊東 善哉草刈 潤
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1999 年 42 巻 Supplement1 号 p. 27-31

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抄録

当科において1988年から1998年の10年間に入院加療を行った聴器悪性腫瘍20例について臨床的検討を加えた。男女比は1 : 1であり, 年齢は17歳から79歳 (平均55.4歳) であった。病理組織学的には扁平上皮癌が11例, 腺様嚢胞癌および腺癌がそれぞれ4例, 基底細胞癌が1例であり, 外耳道発生例が15例, 中耳発生例は5例であった。主訴としては耳痛, 耳漏がそれぞれ7例 (35%) と最も多く, これら2症状に比べ他症状を主訴とする症例は少なかった。20症例全体のKaplan-Meier法による累積5年生存率は72.6%であった。Stellの分類におけるT1, T2症例での観察期間中の腫瘍死は1例のみであり, 5年生存率も90.9%と予後が良好であったのに対し, T3症例での5年生存率は20.0%と予後不良であった。これらの結果からは中耳および外耳限局例では中耳根本手術により, 十分に良好な予後が期待されることが示唆されるとともに, 難治性の耳痛, 耳漏においては十分に本疾患に留意し, 早期発見に努めるべきと考えられた。

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