耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
診断に苦慮した外耳道原発腫瘍の1症例
Keratoacantoma ? verrucous carcinoma ?扁平上皮癌?
八代 利伸田中 康広宇井 直也丹羽 洋二森山 寛
著者情報
キーワード: 側頭骨, 扁平上皮癌
ジャーナル フリー

2000 年 43 巻 3 号 p. 204-208

詳細
抄録

今回我々は, 外耳道原発腫瘍で経過中に数回行った病理組織学的検査にて悪性の診断がつかず, 最終的に不幸な転機をとった高分化型扁平上皮癌の1症例を経験した。経過中の診断としてはkerato-acanthomaが疑われたが, 過去の類似症例の文献的考察などから推察するとverrucous carcinomaに酷似しており, 本症例もverrucous carcinomaであった可能性が強く示唆された。
扁平上皮癌, keratoacanthoma, verrucous carcinomaの3疾患の鑑別は非常に困難とされる。したがって, その最終診断にはかなりの混乱が生じているものと考えられた。本症例はなかなか悪性の診断がつかず経過をみているうちに, 積極的に拡大あるいは広範囲切除を行う時期が遅れてしまった反省がある。病理的に診断が難しく, 診断に苦慮し, keratoacanthomaやverrucous carcinomaなどを疑わせる病理所見や臨床経過がみられた場合, 速やかに根治的治療を行うべきであると思われた。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top