耳鼻咽喉科展望
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気管切開後に生じた気管食道瘻例の治療経験
宇田川 寛子波多野 篤吉田 拓人大橋 正嗣重田 泰史三谷 幸恵梅澤 祐二
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2002 年 45 巻 2 号 p. 124-131

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抄録

後天性気管食道瘻は, 進展した食道癌などに続発するものの他に稀ではあるが気管切開術後の合併症としても発生し, その治療には難渋することが多い。今回, 開腹手術後, 気管切開術が行われ, 胃管チューブと気管カニューレとの間の気管膜様部において気管食道瘻を形成した症例を経験した。カブを瘻孔の気管末梢部で固定することで誤嚥を防止し, 全身状態の改善を待ち, 頸部の前側方からのアプローチにより瘻孔閉鎖術を行った。瘻孔の気管側に食道粘膜をつけて気管と食道を切離後, この食道粘膜を翻転し気管側の瘻孔を閉鎖し, 食道側も一時的に縫合した。さらにこの間に胸鎖乳突筋弁を介在させることで, 縫合部の補強及び接触防止を図り, 瘻孔の再形成及び二次的な気管狭窄の防止に努めた。気管切開術後に発生する気管食道瘻の主たる成因は, 過度のカブ圧による気管粘膜の圧迫壊死であり, 瘻孔形成に至った病態を十分理解し, これらを改善した後, 外科的治療を行うことが有用であると思われる。瘻孔を形成した症例では全身状態の悪化を背景に, その治療に難渋するため, 症例ごとの病態に沿った細やかな対応や, 何にもまして予防が重要であると思われる。

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