耳鼻咽喉科展望
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小児急性中耳炎の鼓膜所見に対する病期分類の試みとその検証
上出 洋介
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2003 年 46 巻 1 号 p. 17-30

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抄録

小児急性中耳炎の画像データをもとに0~1歳の中耳炎患児に対してレトロスペクティブな追跡を試みた。今回急性中耳炎の鼓膜所見に対し5段階の病期分類評価を提案した。さらにこの病期分類にもとついた追跡調査結果が整合性と妥当性のあるものかどうかを検証した。
対象の母集団は3年3ヵ月の問に当院を受診した0~6歳までの乳幼児2,137名で初診時に中耳炎と診断され加療された患児とした。
[結果] 年齢別罹患頻度は, 急性中耳炎は0歳児では85.5%, 1歳児では88.4%でその後年齢が長ずるにしたがって急性中耳炎の占める割合が減少していた。相対的には滲出性中耳炎が増加した。
病期分類の結果, 0, 1歳児ともにstage4, 5の合計が全体の半分を占めており, 乳児の急性中耳炎は悪化した例が多いという過去の事実に一致した。2, 3歳児ではstage4, 5が合計25%で, 年齢の上昇とともに重症例が減少していた。
治癒までの期間を見ると0, 1歳児においてstage1では1ヵ月以内に80%が治癒するが, stage5では55~60%に減少していた。0歳児では両側性が1ヵ月以内に48.6%治癒している。片側性については1ヵ月以内に80.5%が治癒しており, 治癒の傾向は片側性のほうが両側性に比べ良好であり, また年齢に応じて治癒率が向上しているのが認められる。
[結論] 検証の結果, 病期分類は整合性と妥当性のある分類であると判断した。

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