耳鼻咽喉科展望
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スギ花粉症患者における免疫応答の季節性変動に関する検討
茂呂 八千世
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キーワード: スギ花粉症, 季節変動, T細胞
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2003 年 46 巻 2 号 p. 121-133

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抄録

スギ花粉抗原に対する免疫応答の季節性変動は, 従来報告されているように花粉飛散期には活性化され, 花粉飛散後は徐-に低下し, 翌年の花粉飛散前にはほとんど認められないといったパタ-ンである。しかし, 最近では花粉飛散開始以前においても症状を示す患者が認められることから, スギ花粉抗原に対する免疫応答の季節性変動はこれまでとは異なったパタ-ンが存在すると思われる。そこで, 本研究では従来測定されてきたIgE抗体価ばかりでなく, 発症に至るまでの中心的な役割をしているT細胞の観点から免疫応答の季節性変動に関して検討を加えた。方法は, 平成12年4月, 平成13年1月, 4月, 9月の各時期に18名のスギ花粉症患者末梢血を用いて, スギ花粉主要抗原Cryj 1, Cryj 2およびそれぞれの患者の主要なT細胞エピト-プに対するT細胞の増殖反応性, さらには抗原認識に関連するMHCクラスII分子についてDNAタイピングを行った。B細胞の観点からは, スギ花粉抗原特異的IgE抗体価および総IgE量, さらには他のアレルゲン特異的IgE抗体価を測定した。なお, 採血時には問診を行い発症時期や症状の程度と免疫応答性との関連を検討した。その結果, 従来の報告と同様なIgE抗体価の季節性変動を示す患者群 (変動群) では, 抗原に対するT細胞の反応性も相関して季節性変動を示すことが判明した。さらに興味あることに, IgE抗体価ばかりでなくT細胞の反応性が花粉飛散前においても高値を示す患者群 (持続群) が3分の1も存在することが判明した。持続群の発症時期は花粉飛散開始日より早いか飛散開始日より1週以内であり, 変動群に比べ早いことが問診で明らかになった。HLA-DPB 1*0501の対立遺伝子を有する患者は75%と高い頻度であったが, 変動群と持続群の問には明らかな差は認められなかった。以上より, 免疫応答が花粉飛散後も持続する患者では極微量のスギ花粉曝露によっても発症することが示唆された。

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