耳鼻咽喉科展望
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輪状咽頭筋切断術後に胃瘻造設を要したWallenberg症候群の1症例
井上 真規大石 公直佃 守
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2003 年 46 巻 6 号 p. 481-484

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抄録

Wallenberg症候群は延髄梗塞のうち延髄外側部が障害されておこる症候群で約半数に嚥下障害が出現する。今回われわれはWallenberg症候群による嚥下障害に対して輪状咽頭筋切断術を施行後も誤嚥性肺炎を繰り返し, 胃痩造設を要した症例を経験したので報告する。症例は75歳男性で, めまい, 嚥下障害を主訴に当院神経内科を受診しWallenberg症候群と診断された。VTR咽頭食道透視検査にて食道入口部開大不全を認めたため, 両側輪状咽頭筋切断術を施行した。術後のVTR咽頭食道透視検査では良好な食道入口部開大が確認できた。しかし術後も誤嚥性肺炎を繰り返し胃痩を造設した。延髄外側部には, 輪状咽頭筋などの咽頭収縮筋の支配神経である迷走神経運動核や舌咽神経核が存在する疑核があるが, この疑核に限らず, 孤束核や小細胞性網様体などの嚥下関連ニューロンも多数存在し, 嚥下のパターン形成を演出している。すなわちWallenberg症候群における延髄の障害部位は症例によって様々であり, 障害部位によっては輪状咽頭筋切断術だけでは十分な効果が期待できない症例もあると考えられた。

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