抄録
聴覚の障害は先天的な遺伝子異常や内耳蝸牛における有毛細胞のアポトーシスなど様々な原因で発生する。聴覚障害を持つ患者の数は多いが, 発症の機構が完全には明らかにされていないため, この疾患に対しての抜本的治療法の開発はあまり進んでいない。しかしここ10年の分子生物学の進歩により遺伝子レベルでの障害のメカニズムが急速に解明されてきた。それに伴い障害された組織に直接遺伝子を導入して治療を図る遺伝子治療や失われた細胞を再生させ障害を取り除こうとする内耳の再生医療などの可能性がクローズアップされている。本文では聴覚障害について現在どのような治療研究が行われているのか簡単に解説した。