耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
直線加速度刺激による重力軸および水平軸認知への影響
吉田 茂石井 正則須藤 正道中村 将裕近澤 仁志
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 48 巻 4 号 p. 214-220

詳細
抄録

空間識を形成する感覚系のひとつとされる耳石器に正弦波状の直線加速度刺激を一定方向に連続負荷することで, 空間の認識, 特に重力軸と水平軸の認知に与える影響を検討した。
装置は宇宙開発事業団 (現, 宇宙航空研究開発機構) の直線加速度負荷装置を用いた。方法は臥位にした被験者のZ軸方向 (体軸方向 : 主に球形嚢刺激) とY軸方向 (左右水平方向 : 主に卵形嚢刺激) に, それぞれ連続かつ反復負荷した。重力軸と水平軸認知の計測法は, 被験者の正面の壁に液晶ディスプレイで2点を投影し, この2点をジョイスティックの操作で被験者に回転させた。そして重力軸方向と水平軸方向を示させ, 重力軸と水平軸それぞれの角度誤差を計測した。計測した角度誤差よりZ軸方向負荷, Y軸方向負荷が重力軸方向と水平軸方向の認知に与える影響を検討した。
結果としては重力軸認知に関しては, 体軸方向負荷のほうが左右水平方向負荷よりも角度誤差が大きくなる傾向を示した。水平軸認知に関してはZ軸方向負荷とY軸方向負荷で差を認めなかった。Z軸方向負荷は, 主に重力軸方向のセンサーである耳石器 (主に球形嚢) に直線加速度刺激を反復したことになり, その結果, 重力軸の認知が低下したと考えられた。このことから, 耳石器は空間識形成に関与している可能性が考えられた。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top