2006 年 49 巻 3 号 p. 131-136
類皮嚢胞は外胚葉成分に由来する嚢胞で, 全身各所に発生するが, 好発部位は肛門・卵巣等であり頭頸部領域では比較的稀である。先天性のものと後天性のものがあり, いずれも発症は思春期以降であることが多い。今回我々は乳児の口腔底に発生した稀な類皮嚢胞の症例を経験したので報告する。症例は5ヵ月の男児で主訴は哺乳障害であった。口腔底に直径約3cmの腫瘤を認め, 前医で開窓術や穿刺による縮小を試みたが改善がなく当科に紹介となった。全身麻酔下に腫瘤摘出術を施行し, 哺乳可能となり退院した。新生児・乳幼児例では皮膚瘻を伴う例や多発例・多房性例の報告も散見されるなど, 単一嚢胞ではなく複雑な形態をとる傾向があるため摘出に際し注意を要する。また, 術後の気道管理にも配慮しなければならない。