耳鼻咽喉科展望
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翼口蓋窩に進展したAllergic Fungal Sinusitisの1症例
富谷 義徳飯田 誠浅香 大也落合 文近藤 悠子渡邉 統星
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2006 年 49 巻 4 号 p. 179-185

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抄録

病変が翼口蓋窩に進展したAllergic Fungal Sinusitisの1症例を経験した。症例は32歳女性で右片側性副鼻腔炎に対し内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行ったが再発をきたした。再発時の副鼻腔CTでは右側のすべての副鼻腔と左節骨洞, 蝶形骨洞, 前頭洞に陰影を認め, 両側とも蝶形骨洞の外側の骨欠損が疑われ, 軟部組織陰影が翼口蓋窩に進展していた。再度内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行い副鼻腔内に充満していたニカワ状の内容物 (ムチン) を可及的に摘出した。術中採取した副鼻腔粘膜には好酸球浸潤を認め, 粘液様物質, 壊死組織の中に少量の真菌の菌糸を認めた。また摘出したムチンには好酸球浸潤とCharcot-Leyden Crystalsを認めアレルギー性ムチンと診断した。またグロコット染色にてアスペルギルスの菌糸を認め本症例をAllergic Fungal Sinusitisと診断した。術後ステロイド薬 (セレスタミン (R)) の内服および生食による鼻内洗浄とヘパリン散布を行い鼻内所見は改善した。副鼻腔CTでは術前に骨欠損と思われた部分に骨を認め, 翼口蓋窩に認めた病変も正常に復していた。このことからAllergic Fungal SinusitisにおけるCT上の骨欠損と思われる所見は骨の破壊によってではなく, ムチンの充満によって副鼻腔内圧が上昇し副鼻腔骨壁が薄くなったことによって見られる現象であり, 病変の改善によって回復しうる可逆的なものである可能性が考えられた。

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