耳鼻咽喉科展望
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マクロライド系抗菌薬クラリスロマイシンの鼻茸への移行性
羽柴 基之小関 晶嗣大野 伸晃中村 善久濱島 有喜渡邉 暢浩村上 信五
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2007 年 50 巻 2 号 p. 89-94

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抄録

マクロライド系抗菌薬クラリスロマイシン (CAM) の慢性副鼻腔炎に対する有効性を, 組織移行性の面から評価するため, 少量長期療法 (投与量200mg/日, 投与期間14日間以上) を実施している慢性副鼻腔炎患者5例において, 鼻茸および鼻・副鼻腔粘膜への移行性を検討した。血清中および組織内濃度はCAMと活性代謝物である14位水酸化体 (14-OH CAM) それぞれについて測定した。血清中濃度 (中央値, n=5) は, CAM : 0.54μg/mL, 14-OH CAM : 0.36μg/mL, CAM+14-OH CAM : 0.90μg/mLであった。鼻茸内濃度 (中央値, n=5) は, CAM : 7.00μg/g, 14-OH CAM : 1.36μg/g, CAM+14-OH CAM : 8.69μg/gであった。鼻茸内の濃度は血清中濃度に対して, CAMで12.3倍, 14-OH CAMで4.1倍, CAM+14-OH CAMで9.9倍 (中央値) と血清中濃度を大きく上回っていた。鼻粘膜内濃度 (n=1) は, CAM : 4.80μg/g, 14-OH CAM : 2.41μg/g, CAM+14-OH CAM : 7.21μg/gであり, 血清中濃度に対して, CAMで8.9倍, 14-OH CAMで6.7倍, CAM+14-OH CAMで8.0倍を示した。副鼻腔粘膜内濃度 (n=1) は, CAM : 6.01μg/g, 14-OH CAM : 2.28μg/g, CAM+14-OH CAM : 8.29μg/gであり, 血清中濃度に対して, CAMで7.3倍, 14-OH CAMで5.4倍, CAM+14-OH CAMで6.7倍を示した。
以上の結果から, CAMは鼻茸および鼻・副鼻腔組織に高濃度移行することが確認され, このことが高い臨床効果の発現に寄与していると考えられた。

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